基本的に、魂柱は自分で作ります。
 市販の魂柱もありますが、自分で作るメリットがいくつかあるからです。
①繊維のまっすぐな魂柱をつくることができる
 ②任意の太さに作ることができる
 ③古い材を使った魂柱を作ることができる
 ④色々な性質の材を選んで作ることができる
やはり市販の魂柱よりも自由度が高いといったところが自作のメリットでしょう。
 (と言いつつ、実は「自分で作りたい」という単純な欲求だったりもするのですが・・・)
で、写真にあるチェロの魂柱、ちょっと面白い材木から作ったんです。
15年ほど前の話になります。
 当時、私はクレモナに住んでいました。
 まだイタリアに渡って間もないころで、楽器を作りたいのだけど、
 そのための材木を持っていない、という状況でした。
 楽器の材木は、最低でも数年間乾燥させなければならないと言われています。
 (これは、もっと短期間でも良いという意見もあります)
 そこで、すぐに使えるできるだけ古い材木はないかと探しました。
 そして知人に教えてもらった、以前は楽器用材を取り扱っていたが
 今はしていないという材木屋さん、というか木工所のようなところに行きまして、
 倉庫に眠る埃まみれのヴァイオリン用材をいくつか購入したのです。
 上の写真にあるチェロの魂柱は、そんな材木の一つから製作しました。
で、この材木屋さん。
 なんでも、あとで聞いた友人の話よれば、
 その昔、ポー川(クレモナの近くを流れる川)の氾濫で水没したことがあるとか。
 もちろんヴァイオリン用材も水に浸かったと・・・
 さて、ここでストラディヴァリウスの音の秘密にまつわる一説をご紹介しましょう。
 『ストラディヴァリウスが作った楽器の音が良いのは、
 使っている材木がポー川で運ばれ来ていたからだ!!』
 というものです。
どういうことかというと、
 現代のような輸送手段のない時代、材木は川に直接浮かべて運搬していました。
 その過程で、当然材木は川の水をたっぷりと吸い込みます。
 そして川の水に含まれる成分が、楽器としての材木の性質を良くした、という説です。
つまり!
この魂柱もポー川の恩恵を受けているかもしれないということなのです!!
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 はたして、本当にこの魂柱で使われた材木がポー川に浸かったのか、
 本当にポー川の水質が材木の性質を良くするのか、私にはわかりません。
 ただ、真偽のほどは置いておいて、こういう話はとても面白いなぁと思う次第です。
えっ!?
 なぜヴァイオリン用材からヴァイオリンではなくて、チェロの魂柱を作ったか、ですか?
 そ、それは・・・ゲフン、ゴホン。
ではまた、機会のある時に、実際に楽器にこの魂柱を入れたレポートもできたら良いなと思います。
お楽しみに!
